column コラム
いびき治療の種類を徹底比較…レーザー・CPAP・マウスピースの違い
2025.11.18
目次
1.いびき治療の種類を徹底比較…レーザー・CPAP・マウスピースの違い
2.いびきの原因と治療が必要な理由
3.レーザー治療の特徴とメリット・デメリット
4.CPAP療法の特徴とメリット・デメリット
5.マウスピース治療の特徴とメリット・デメリット
6.3つの治療法を徹底比較…あなたに最適な選択は?
7.よくある質問…いびき治療の疑問を解消
8.まとめ…あなたに合ういびき治療を見つけよう
いびき治療の種類を徹底比較…レーザー・CPAP・マウスピースの違い
毎晩のいびきで熟睡できず、日中の眠気や集中力の低下に悩んでいませんか?
いびきは単なる「うるさい音」ではなく、睡眠時無呼吸症候群という深刻な病気のサインかもしれません。放置すると高血圧や心臓病、脳卒中などのリスクを高める可能性があります。
現在、いびき治療には「レーザー治療」「CPAP療法」「マウスピース治療」という3つの主要な選択肢があります。それぞれに特徴があり、症状や生活スタイルによって最適な治療法は異なります。
この記事では、30年以上の耳鼻咽喉科診療経験と29,000件以上のいびきレーザー治療実績を踏まえた、各治療法の違いを詳しく解説します。
いびきの原因と治療が必要な理由
いびきは睡眠中に鼻や喉の空気の通り道(上気道)が狭くなり、そこを空気が通過する際に粘膜が振動して発生する音です。
起きている時は筋肉の働きで気道が十分に開いています。しかし睡眠中は全身の筋肉が緩むため、元々気道が狭い方はさらに狭くなり、いびきをかきやすくなるのです。
気道が狭くなる主な要因
気道狭窄を引き起こす要因は多岐にわたります。
- 肥満による首周りの脂肪沈着・・・体重増加とともに舌も大きくなり、気道を圧迫します
- 扁桃腺やアデノイドの肥大・・・特に子供に多く見られる原因です
- 舌の付け根(舌根)の落ち込み・・・仰向けで寝ると重力で舌が喉の奥に落ち込みます
- 顎が小さいなどの骨格的な特徴・・・日本人に多い傾向があります
- 加齢による筋力の低下・・・40代以降で急増します
睡眠時無呼吸症候群との深い関係
30代以上で習慣的にいびきをかく方は、まず睡眠時無呼吸症候群かその予備軍と考えられます。
この病気は大きないびきの後に呼吸が止まり、しばらくして「ガッ」という大きないびきとともに呼吸が再開するのが特徴です。睡眠中に呼吸が止まると体内の酸素濃度が低下し、心臓や血管に大きな負担がかかります。
放置すると高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています。また深刻な寝不足から日中に強い眠気に襲われ、重大な事故を引き起こす原因にもなり得るのです。
レーザー治療の特徴とメリット・デメリット
レーザー治療は近年注目を集めている、切らないいびき治療法です。
喉の粘膜にレーザーを照射することで、緩んだ組織を引き締め、気道を広げる効果が期待できます。
レーザー治療のメリット
最大の利点は「切らない」「痛みが少ない」「ダウンタイムがほとんどない」という3点です。
従来の外科手術と異なり、メスを使わず切除もしないため、施術後の出血や痛みがほとんどありません。治療時間は約15分と短く、日帰りで受けられます。仕事や用事の隙間時間にも治療を受けることができ、入院も不要です。
治療直後から飲食が可能で、普段通りにお過ごしいただけます。身体への負担が最小限のため、痛みに弱い方でも気軽に受けていただける治療法と言えるでしょう。
レーザー治療のデメリット
一方で、レーザー治療にも限界があります。
鼻詰まりなどが原因のいびきの場合は効果が限定的な場合もあります。また、より効果を実感するためには複数回の照射が必要になることが多く、保険適用外のため費用は自己負担となります。
効果の持続期間は個人差がありますが、一般的に1年から数年程度と考えられます。定期的なメンテナンスが必要になる可能性もあることを理解しておく必要があります。
レーザー治療が適している方
喉の粘膜の緩みや、肥満、生まれながらの骨格、女性ホルモンの影響などにより生じた気道の狭まりによって引き起こされるいびきに対し、効果が期待できます。
手術に抵抗がある方、仕事を休めない方、痛みに弱い方には特におすすめです。ただし、患者様の症状によって最適な治療法は異なるため、専門医による診断を受けることが重要です。
CPAP療法の特徴とメリット・デメリット
CPAP(シーパップ)療法は、睡眠時無呼吸症候群治療のゴールドスタンダードと呼ばれる治療法です。
睡眠中に鼻マスクを装着し、空気を送り込むことで気道を広げ、呼吸を安定させます。中等度から重症の睡眠時無呼吸症候群に対して、最も効果的な治療法とされています。
CPAP療法のメリット
最大の利点は、その高い治療効果です。
低呼吸無呼吸指数(AHI)が90%程度改善されるという報告があり、使用中は確実に症状を抑えることができます。保険適用となるため、3割負担で月額5,000円程度(年間約6万円)と、経済的負担も比較的軽いと言えます。
重症の睡眠時無呼吸症候群の方にとっては、生活の質を大きく改善できる治療法です。心臓や血管への負担を軽減し、日中の眠気も大幅に改善されます。
CPAP療法のデメリット
しかし、CPAP療法には継続の難しさという大きな課題があります。
装用継続率は60~70%と報告されており、約3割の方が途中で使用をやめてしまいます。毎晩マスクを装着して寝ることに不快感を感じる方も少なくありません。鼻や喉の乾燥、マスクによる圧迫感、装置の音などが気になる場合もあります。
また、旅行や出張の際に持ち運ぶ必要があり、携帯性の面でも不便を感じる方がいます。使用を中止すると症状が再発するため、基本的には生涯にわたって使い続ける必要があります。
CPAP療法が適している方
中等度から重症の睡眠時無呼吸症候群と診断された方には、まずCPAP療法が推奨されます。
特に無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上の方、日中の眠気が強い方、高血圧や心臓病などの合併症がある方には効果的です。ただし、装置への適応には個人差があるため、使用感を確認しながら継続の可否を判断することが大切です。
マウスピース治療の特徴とメリット・デメリット
マウスピース治療(スリープスプリント)は、寝ている間に下顎を4~7ミリ前に出して、舌根を引き上げ気道を広げる治療法です。
1980年代から睡眠時無呼吸症候群やいびき症に対する治療法として報告されるようになり、現在では一般的な治療選択肢の一つとなっています。
マウスピース治療のメリット
最大の利点は、簡便さと携帯性の良さです。
入れ歯よりも小さく、旅行にも持っていけます。材質は歯ぎしりや矯正用マウスピースと全く同じ高分子化合物でできているので、透明で目立たず、他の方からいびきの治療をしていることに気づかれません。
保険適用で作成できる場合、3割負担で約2万円程度(他に調整費用や検査費用等)と、比較的手頃な価格で治療を始められます。CPAPのように毎晩装置を装着する煩わしさもなく、口に入れるだけで使用できます。
マウスピース治療のデメリット
一方で、効果には限界があります。
CPAPと比較すると、低呼吸無呼吸指数(AHI)の改善率は約50%程度と、効果が限定的です。中軽度のいびきの方であればマウスピースはCPAPと同程度の効果があると考えられますが、重症の場合は十分な効果が得られない可能性があります。
また、使用には条件があり、20本程度の歯が必要で、上の歯より下の歯が8ミリ以上前に出せる必要があります。顎の痛みを生じる可能性があり、歯科用インプラント埋入後数年間は使用できません。虫歯で歯の治療をした場合は、再作成の必要性があることも理解しておく必要があります。
マウスピース治療が適している方
軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群の方、CPAPが合わない方の代替療法として適しています。
どうしてもCPAPはダメという方に対しては、マウスピースは有効な選択肢となります。ただし、十分な本数の歯があり、顎関節に問題がないことが前提条件となります。専門の歯科医による診断と調整が必要です。
3つの治療法を徹底比較…あなたに最適な選択は?
ここまで3つの治療法を個別に解説してきました。
では、実際にどの治療法を選ぶべきなのでしょうか?症状の重症度、生活スタイル、費用、継続のしやすさなど、様々な観点から比較してみましょう。
治療効果の比較
治療効果の高さでは、CPAP療法が最も優れています。
低呼吸無呼吸指数(AHI)の改善率は約90%と、他の治療法を大きく上回ります。マウスピース治療は約50%の改善率、レーザー治療は症状や照射回数によって効果に幅があります。
重症の睡眠時無呼吸症候群の場合、まずCPAP療法を試すことが推奨されます。軽度から中等度の場合は、マウスピースやレーザー治療も選択肢となります。
費用の比較
保険適用の有無で費用は大きく異なります。
CPAP療法は保険適用で月額約5,000円(3割負担)、年間約6万円です。マウスピース治療も保険適用で総額約2万5,000円(3割負担)と比較的手頃です。
一方、レーザー治療は保険適用外のため、1回あたり数万円から十数万円かかります。複数回の照射が必要な場合、総額で50万円以上になることもあります。ただし、CPAPのように毎月の費用が発生し続けることはありません。
生活への影響の比較
日常生活への影響という点では、レーザー治療が最も少ないと言えます。
治療後はダウンタイムがほとんどなく、普段通りの生活を送れます。マウスピースは毎晩装着する必要がありますが、携帯性が良く旅行にも持っていけます。
CPAP療法は毎晩マスクを装着する必要があり、旅行や出張時にも装置を持ち運ぶ必要があります。装置への適応には個人差があり、不快感から継続できない方も一定数います。
症状別の推奨治療法
重症の睡眠時無呼吸症候群(AHI 30以上)の場合、CPAP療法が第一選択となります。
中等度(AHI 15~30)の場合、CPAP療法またはマウスピース治療が推奨されます。軽度(AHI 5~15)の場合、マウスピース治療やレーザー治療も選択肢となります。
いびきのみで無呼吸がない場合、レーザー治療やマウスピース治療が適している可能性があります。ただし、最終的な判断は専門医の診断に基づいて行うことが重要です。
よくある質問…いびき治療の疑問を解消
ここでは、診療の現場でよく受ける質問とその回答をまとめました。
Q1. いびき治療は保険適用になりますか?
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、CPAP療法やマウスピース治療は保険適用となります。ただし、単に「いびきの音が気になる」という理由だけでは保険適用にはなりません。まず睡眠時無呼吸の検査を受け、診断を受けることが必要です。レーザー治療は現在のところ保険適用外となっています。
Q2. どの治療法が一番効果的ですか?
症状の重症度によって最適な治療法は異なります。重症の睡眠時無呼吸症候群の場合、CPAP療法が最も効果的です。軽度から中等度の場合は、マウスピース治療やレーザー治療も選択肢となります。専門医による診断と検査を受け、ご自身の症状に合った治療法を選ぶことが大切です。
Q3. 治療を始めるとすぐに効果が出ますか?
CPAP療法は使用した日から効果を実感できることが多いです。マウスピース治療も装着すればすぐに効果が期待できます。レーザー治療は、照射後1~2週間程度で徐々に効果が現れ始め、複数回の照射で効果が高まります。個人差はありますが、多くの方が治療開始後比較的早い段階で改善を感じられます。
Q4. 治療をやめると元に戻ってしまいますか?
CPAP療法とマウスピース治療は、使用を中止すると症状が再発します。これらは対症療法であり、根本的な原因を取り除くものではありません。レーザー治療は一定期間効果が持続しますが、加齢や体重変化などにより再度治療が必要になる場合もあります。継続的な管理が重要です。
Q5. 複数の治療法を併用することはできますか?
はい、可能です。例えば、CPAP療法とレーザー治療を併用することで、CPAPの設定圧を下げられる場合があります。また、鼻詰まりがある場合は、鼻炎の治療と並行していびき治療を行うことで、より高い効果が期待できます。専門医と相談しながら、最適な組み合わせを見つけることが大切です。
まとめ…あなたに合ういびき治療を見つけよう
いびき治療には「レーザー治療」「CPAP療法」「マウスピース治療」という3つの主要な選択肢があります。
CPAP療法は効果が最も高く、重症の睡眠時無呼吸症候群に適しています。マウスピース治療は簡便で携帯性が良く、軽度から中等度の方に向いています。レーザー治療は切らない治療で身体への負担が少なく、手術に抵抗がある方におすすめです。
どの治療法が最適かは、症状の重症度、生活スタイル、費用、継続のしやすさなど、様々な要素を総合的に考慮して決める必要があります。
まずは専門医による診察と睡眠時無呼吸の検査を受け、ご自身の状態を正確に把握することが大切です。その上で、医師と相談しながら最適な治療法を選びましょう。
いびきや睡眠の質でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。詳細はこちら:コレージュクリニック
コレージュクリニックとは

当院は、いびきをはじめ、睡眠時無呼吸症候群や花粉症・アレルギー性鼻炎などの診療を専門とする耳鼻咽喉科クリニックです。
いびきは単なる音の問題にとどまらず、時に健康へ深刻な影響を及ぼすこともあります。当院では、原因や症状を丁寧に見極めたうえで、適切な診断と治療をご提案し、質の高い睡眠の回復をめざします。
一人ひとりに寄り添いながら、健やかな眠りと快適な毎日をサポートいたします。
レーザー治療は保険適用、自己負担は約3割
ほとんどの治療は健康保険が適用され、自己負担額はおよそ31,000円前後。保険証をお忘れなくご持参ください。
医師紹介
都筑 俊寛(つづく としひろ)

耳鼻咽喉科専門医。レーザー治療の臨床と研究に長年携わり、28,000件以上の治療実績をもつ。
- 日本耳鼻咽喉科学会認定 専門医
- 日本めまい平衡医学会 参与
- 日本臨床医療レーザー協会 会員
- 帝京大学医学部 元准教授
いびきは単なる音の問題ではありません。 睡眠の質を下げ、生活の質を大きく損なうこともあります。 専門医として、安心できる診断と治療を通じて、より良い毎日を取り戻すお手伝いができればと願っています。