column コラム
いびき治療で保険適用される条件とは…費用と必要な検査を詳しく解説
2025.11.19
目次
1.いびき治療で保険適用を受けるための基本条件
2.睡眠時無呼吸症候群と診断されることが保険適用の鍵
3.保険適用される検査の種類と費用の目安
4.保険適用される治療法とそれぞれの費用
5.保険適用外となる治療法と自費診療の費用
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ:いびき治療の保険適用は診断が鍵
いびき治療で保険適用を受けるための基本条件
「いびきがうるさい」と家族に言われ続けている方は少なくありません。
しかし、いびき治療を考えたとき、最初に気になるのが「保険は使えるのか」という点でしょう。実は、単純に「いびきを治したい」という理由だけでは、保険適用にならないケースがほとんどです。
保険適用を受けるためには、医学的に治療が必要と認められる診断が必要になります。
この記事では、いびき治療で保険適用される具体的な条件や保険適用される治療法と自己負担額の目安について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群と診断されることが保険適用の鍵
いびき治療で保険を使うには、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気の診断が必要です。
単純ないびきは、気道の振動によって音が発生する現象にすぎません。疲れているときやお酒を飲んだ後に一時的にいびきをかく程度であれば、医学的には治療が必要な病気とは認められないのです。
一方、睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止や呼吸が浅くなる状態が繰り返し起こる病気です。この状態を放置すると、高血圧や心疾患、脳卒中などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、適切な診断と治療が保険適用の対象となるのです。
診断基準となるAHI(無呼吸低呼吸指数)とは
睡眠時無呼吸症候群の診断には、AHI(Apnea-Hypopnea Index)という指標が使われます。
これは1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数を合計したもので、この数値によって重症度が判定されます。AHIが5未満であれば正常範囲、5〜14が軽症、15〜29が中等症、30以上が重症と分類されるのです。
保険適用の基準として、一般的にはAHIが15以上の場合、またはAHIが5以上14以下でも高血圧、心疾患、脳血管疾患、日中の過度の眠気、不眠症、気分障害、認知機能障害などの合併症がある場合に治療が推奨されます。
いびきのみでは保険適用にならない理由
「たかがいびき」と思われがちですが、実は重要なサインかもしれません。
しかし、いびき自体は必ずしも治療が必要な病気とは認められていないため、美容的な理由や「音が気になる」という理由だけでは自費診療となります。ただし、いびきが断続的で、時々呼吸が止まっているように聞こえる場合や、日中の強い眠気を伴う場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いため、早めの検査が肝要です。
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、交通事故や労働災害のリスクも高まります。日中の耐え難い眠気により、普通では考えられない状況で寝てしまうことがあるからです。自分の命を守るのはもちろん、周囲の命を脅かさないためにも、適切な診断と治療が重要になります。
保険適用される検査の種類と費用の目安
睡眠時無呼吸症候群の診断には、段階的な検査が必要です。
まず医師による診察を受け、睡眠時無呼吸症候群の可能性があると判断された場合に、睡眠検査を実施します。検査には大きく分けて「簡易検査」と「精密検査」の2種類があり、それぞれ費用と検査内容が異なります。
自宅でできる簡易アプノモニター検査
簡易検査は自宅で実施できる検査です。
指先につけるパルスオキシメーターや鼻に装着するセンサーで呼吸状態を測定します。この検査は気兼ねなく自宅で行えるため、多くの患者さんにとって最初のステップとなります。費用は3割負担の場合、約3,000円〜3,600円程度が目安です。
検査装置は提携業者から郵送で届き、装着して睡眠するだけなので、普段通りの環境で検査を受けることができます。ただし、簡易検査だけでは詳細な診断ができない場合もあり、その際は精密検査が必要になることもあります。
より詳細な精密検査(PSG検査)の内容と費用
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)は、医療機関に一泊入院して行う精密検査です。
脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸運動、動脈血酸素飽和度など多くの生体情報を記録します。この検査により、睡眠の質や無呼吸の詳細な状態を把握できるため、より正確な診断が可能になります。
費用は3割負担の場合、約10,000円〜30,000円程度が目安です。医療機関によって差があり、場合によっては入院費に加え、血圧や糖尿病、不整脈などの検査も同時に行うため、最大で50,000円程度かかることもあります。ただし、高額療養費制度の対象となるため、所得に応じて自己負担額の上限が設定されます。
検査から診断までの実際の流れ
検査の流れは、まず初診で問診と診察を受けることから始まります。
初診料は3割負担で約3,100円程度です。医師が睡眠時無呼吸症候群の兆候を疑う場合、当日すぐに検査の手続きに入ります。提携業者に申し込み、数日以内に業者から患者様に検査についてのご連絡があります。
検査装置がご自宅に郵送で届いたら、装置を装着して睡眠するだけです。簡易検査時の結果によっては、治療開始前に精密検査を実施する場合もあります。検査結果が出たら、再度医師の診察を受け、治療方針を決定します。
保険適用される治療法とそれぞれの費用
睡眠時無呼吸症候群と診断されると、保険適用での治療が可能となります。
治療法には主に「CPAP療法」「口腔内装置(マウスピース)」「外科手術」の3つがあり、それぞれ適用条件と費用が異なります。医師と相談しながら、自分に合った治療法を選択することが重要です。
CPAP療法の保険適用条件と月額費用
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠時無呼吸症候群の第一選択治療法として広く用いられています。
鼻マスクを通じて一定の圧力をかけた空気を送り込み、気道の閉塞を防ぐ治療法です。保険適用の基準は、PSG検査でAHIが20以上、または簡易検査のみの場合はAHIが40以上となります。
月額費用は3割負担の場合、約5,000円程度です。これにはCPAP機器のレンタル料と定期診察料が含まれます。継続適用の条件として、月1回の診察と、1日4時間以上、月70%以上の日数で使用することが求められます。
CPAP療法は高い効果と安全性から標準的な治療法として広く採用されていますが、マスクの装着に慣れるまで時間がかかる方もいます。継続率は約50%とする報告もあり、装置に耐えられず治療を脱落してしまうケースも少なくありません。
口腔内装置(マウスピース)治療の費用と適用条件
マウスピース治療は、睡眠中に下顎を前方に固定することで気道を広げる治療法です。
CPAP療法に比べて装着感が軽く、旅行などにも持ち運びやすいというメリットがあります。保険適用で作成する場合、歯科医院での診療となり、費用は3割負担で約10,000円〜15,000円程度が目安です。
ただし、保険適用には条件があり、医科の医師による睡眠時無呼吸症候群の診断と、歯科医院への紹介状が必要です。また、軽症から中等症の患者さんに適しており、重症の場合はCPAP療法が優先されることが多いです。
保険適用外となる治療法と自費診療の費用
すべての治療法が保険適用されるわけではありません。
レーザー治療や一部の先進的な治療法は、自費診療となるケースがあります。自費診療は費用が高額になる一方、保険診療にはない選択肢やメリットもあります。
レーザー治療の費用相場と特徴
レーザー治療は、口蓋垂や軟口蓋をレーザーで焼灼して縮小させる治療法です。
痛みや出血が少なく、日帰り手術で行えるというメリットがあります。当院では、いびき治療において満足度94%(調査人数1206名、対象期間2020年10月〜2023年10月)、症例数28,000件以上(対象期間:2009年1月〜2024年12月)という実績があります。
レーザー治療の費用は、医療機関によって異なりますが、一般的に150,000円〜400,000円程度が相場です。保険適用外となるため、全額自己負担となります。ただし、睡眠時無呼吸症候群と診断されている場合、一部の医療機関では保険適用となるレーザー治療もあります。
舌下神経電気刺激療法という新しい選択肢
2021年6月に保険適用が認められた新しい治療法があります。
舌下神経電気刺激療法は、鎖骨下に埋め込んだパルスジェネレータが、睡眠中の呼吸に同期して微弱な電気で舌下神経を刺激する治療法です。舌を収縮させて前に出すことで喉が広がり、通りがよくなります。
この治療の適応は、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸の方(AHIが20回/時以上)で、CPAP療法を試行錯誤しても継続できなくてお困りの方が対象です。ただし、18歳以上、肥満指数(BMI)が30kg/m²未満、扁桃肥大などの重度の解剖学的異常がない方など、いくつかの条件があります。
手術費用は保険適用となりますが、全身麻酔による手術が必要で、専門的な外科的手技や研修の修了が必要なため、認定施設でのみ受けることができます。
自費診療のメリットとデメリット
自費診療は費用が高額になるというデメリットがあります。
しかし、保険診療では受けられない最新の治療法や、より快適な治療環境を選択できるというメリットもあります。また、治療のタイミングや方法について、より柔軟な選択が可能になることもあります。
自費診療を選択する際は、治療の効果や安全性、費用対効果をしっかりと確認し、医師と十分に相談することが重要です。また、医療費控除の対象となる場合もあるため、確定申告時に申請することで税金の還付を受けられる可能性があります。
よくある質問(Q&A)
Q1. いびきの検査は痛いですか?
簡易検査も精密検査も、痛みを伴うことはありません。簡易検査は指先にセンサーをつけるだけ、精密検査も体にセンサーを貼り付けるだけなので、安心して受けていただけます。
Q2. CPAP療法は一生続けなければいけませんか?
睡眠時無呼吸症候群の原因によって異なります。肥満が原因の場合、減量によって症状が改善し、CPAP療法が不要になることもあります。ただし、骨格的な問題が原因の場合は、長期的な治療が必要になることが多いです。
Q3. 保険適用の治療で効果が出なかった場合はどうなりますか?
CPAP療法で効果が不十分な場合、マウスピース治療や外科手術など、他の保険適用治療に切り替えることができます。また、複数の治療法を組み合わせることもあります。医師と相談しながら、最適な治療法を見つけていきましょう。
Q4. 子供のいびきも保険適用で治療できますか?
はい、可能です。子供のいびきの多くはアデノイドや扁桃腺の肥大が原因であり、手術が良い適応となります。睡眠時無呼吸症候群と診断されれば、保険適用で治療を受けることができます。
Q5. レーザー治療は保険適用になりますか?
レーザー治療の保険適用は、治療の種類や医療機関によって異なります。一部の医療機関では、睡眠時無呼吸症候群と診断されている場合に保険適用となるレーザー治療もあります。詳しくは医療機関にお問い合わせください。
まとめ:いびき治療の保険適用は診断が鍵
いびき治療で保険適用を受けるためには、睡眠時無呼吸症候群という診断が必要です。
単純ないびきのみでは保険適用にならないケースが多い一方、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、検査から治療まで幅広く保険適用を受けることができます。AHI15以上、または合併症がある場合に保険適用される可能性が高くなります。
CPAP療法、口腔内装置、外科手術は適用条件がそれぞれ異なりますが、いずれも保険適用の対象です。一方、レーザー治療や市販グッズは保険適用外となることが多いため、治療法を選択する際は医師とよく相談することが重要です。
いびきは放置すると深刻な健康リスクにつながる可能性があります。気になる症状がある方は、早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
いびき治療でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。詳しい情報や初診予約については、コレージュクリニックの公式サイトをご覧ください。
コレージュクリニックとは

当院は、いびきをはじめ、睡眠時無呼吸症候群や花粉症・アレルギー性鼻炎などの診療を専門とする耳鼻咽喉科クリニックです。
いびきは単なる音の問題にとどまらず、時に健康へ深刻な影響を及ぼすこともあります。当院では、原因や症状を丁寧に見極めたうえで、適切な診断と治療をご提案し、質の高い睡眠の回復をめざします。
一人ひとりに寄り添いながら、健やかな眠りと快適な毎日をサポートいたします。
レーザー治療は保険適用、自己負担は約3割
ほとんどの治療は健康保険が適用され、自己負担額はおよそ31,000円前後。保険証をお忘れなくご持参ください。
医師紹介
都筑 俊寛(つづく としひろ)

耳鼻咽喉科専門医。レーザー治療の臨床と研究に長年携わり、28,000件以上の治療実績をもつ。
- 日本耳鼻咽喉科学会認定 専門医
- 日本めまい平衡医学会 参与
- 日本臨床医療レーザー協会 会員
- 帝京大学医学部 元准教授
いびきは単なる音の問題ではありません。 睡眠の質を下げ、生活の質を大きく損なうこともあります。 専門医として、安心できる診断と治療を通じて、より良い毎日を取り戻すお手伝いができればと願っています。