column コラム
いびき治療の安全性と副作用〜最新エビデンス
2025.10.23
目次
1.いびき治療の現状と安全性への関心
2.いびきの原因と治療法の種類
3.レーザー治療の安全性と副作用
4.最新のエビデンスからみるいびき治療の効果
5.いびき治療の選び方と専門医の役割
6.いびき治療に関するよくある質問
7.まとめ:いびき治療の安全な選択のために
いびき治療の現状と安全性への関心
いびきでお悩みの方は少なくありません。パートナーから指摘されて初めて自分のいびきに気づく方も多いでしょう。近年では、いびきに悩む人が増加傾向にあり、2025年の調査によれば、実に48.5%の方が自身のいびきに悩んだ経験があるという結果が出ています。
特に男性の54.2%、女性の42.8%が自身のいびきを意識しており、性別を問わず主要な睡眠トラブルとなっています。さらに、他人のいびきに悩む人も過去最大の57.3%に達しています。
いびきは単なる「音」の問題ではなく、睡眠の質の低下や、重症の場合は睡眠時無呼吸症候群へと発展する可能性もある健康問題です。
いびき治療には様々な選択肢がありますが、近年特に注目を集めているのがレーザー治療です。「切らない」「痛みが少ない」「ダウンタイムが短い」といった特徴から、多くの方が関心を持っています。
しかし、治療法を選ぶ際に最も重要なのは、その安全性と副作用について正確に理解することではないでしょうか。
耳鼻咽喉科医として30年以上の臨床経験を持ち、これまで29,000件以上のいびきレーザー治療を行ってきた私が、最新のエビデンスに基づいて、いびき治療の安全性と副作用について詳しく解説します。
いびきの原因と治療法の種類
いびきは、睡眠中に上気道(鼻からのどにかけての空気の通り道)が狭くなることで発生します。のどの奥の軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)などの組織が振動して音が出るのです。
いびきの主な原因としては、肥満、小さな顎、加齢、鼻づまり、口呼吸、アルコール摂取などが挙げられます。これらの要因によって気道が狭くなり、空気の抵抗が高まることでいびきが発生するのです。
いびき治療には、大きく分けて以下のような方法があります。
- 生活習慣の改善:体重管理、睡眠姿勢の工夫、アルコール摂取の制限など
- マウスピース療法:下顎を前方に出して気道を広げる
- CPAP療法:マスクを通して持続的に空気圧をかけ、気道を広げる
- 手術的治療:口蓋垂口蓋咽頭形成術など
- レーザー治療:のどの組織にレーザーを照射して引き締める
特にレーザー治療は、切開や縫合を必要としない非侵襲的な治療法として注目されています。代表的なレーザー治療には、ナイトレーズ、スノアレーズ、パルスサーミアなどがあります。
これらのレーザー治療は、のどの粘膜を引き締め、気道を広げることでいびきを軽減する効果が期待できます。しかし、その効果と安全性については、正確に理解しておく必要があります。
レーザー治療の安全性と副作用
いびきのレーザー治療は、比較的安全な治療法として知られていますが、完全にリスクがないわけではありません。治療を検討される方は、その安全性と起こりうる副作用について正確に理解しておくことが重要です。
レーザー治療の安全性
レーザー治療は、切開や麻酔を必要としないため、従来の手術と比較して身体への負担が少ないという利点があります。特に、のどの粘膜を切開しないことから、出血もなく、痛みもほとんどありません。
治療時間も15〜30分程度と短く、入院の必要もなく、術後すぐに日常生活に戻れることが多いです。これまで世界的に広く行われてきた治療法であり、その安全性は一定程度検証されています。
しかし、安全性が高いとはいえ、医療行為である以上、いくつかの注意点や起こりうる副作用があります。
起こりうる副作用
レーザー治療後に起こりうる副作用としては、以下のようなものが報告されています。
- 一時的な不快感:治療直後ののどの違和感や軽い痛み
- 粘膜の熱傷:レーザーによる熱で粘膜に軽度の熱傷が生じる可能性
- 効果の個人差:体質や症状により、効果に差が出ることがある
- 効果の持続期間:効果は半永久的ではなく、時間の経過とともに再発する可能性
これらの副作用は一般的に軽度であり、重大な合併症は報告されていません。しかし、個人の体質や症状の重症度によっては、予期せぬ反応が起こる可能性もあるため、専門医による適切な診断と治療が重要です。
特に注意すべきなのは、いびきの原因が単純ないびきではなく、睡眠時無呼吸症候群(OSA)である場合です。この場合、レーザー治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。

最新のエビデンスからみるいびき治療の効果
いびき治療、特にレーザー治療の効果については、近年さまざまな研究が行われています。2025年の最新エビデンスに基づいて、その効果と限界について見ていきましょう。
レーザー治療の効果
Er:Yag(エルビウムヤグ)レーザーによる治療がいびきの軽減に効果があるかを調査したシステマティックレビューによれば、いびきの改善が見られ、患者満足度の割合が80%であったと報告されています。
特に、非肥満体型(BMI<30kg/m2)と軽症の閉塞型睡眠時無呼吸(AHI<15/hr)の条件がある場合には、レーザー治療(ナイトレーズ)はいびきの軽減に効果があるという結果が報告されています。
一方で、無呼吸低呼吸指数(AHI)の有意な変化はみられなかったという報告もあります。これは、レーザー治療がいびきの音を軽減する効果はあっても、睡眠時無呼吸症候群の根本的な改善には限界がある可能性を示しています。
効果の限界と注意点
レーザー治療の効果には、いくつかの限界や注意点があります。
まず、肥満体型のある人に対しては、いびき軽減の効果が確実にあるとは言えません。WHO基準の肥満(BMI>30kg/m2)がある場合や、中等症〜重症の睡眠時無呼吸(AHI>15/hr)に該当する場合、レーザー治療の効果および長期予後については不明な点が多いのです。
また、鼻づまりなど鼻の病気や肥満、扁桃/アデノイド肥大がいびきの原因の場合は、レーザー治療の効果が少ない場合があります。
さらに、レーザー治療の効果は半永久的ではなく、個人差はありますが、3〜5回照射後に半年から数年に一度の再照射が必要になることがあります。
これらの点を考慮すると、いびき治療を検討する際には、まず専門医による適切な診断を受け、自分のいびきの原因や重症度を正確に把握することが重要です。
いびき治療の選び方と専門医の役割
いびき治療を選ぶ際には、自分のいびきの原因や症状の重症度を正確に把握し、それに合った治療法を選ぶことが重要です。そのためには、専門医の診断と適切なアドバイスが不可欠です。
適切な治療法の選び方
いびき治療を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 原因の特定:いびきの原因(肥満、鼻づまり、口蓋垂の問題など)を特定する
- 重症度の評価:単純ないびきか、睡眠時無呼吸症候群かを評価する
- 生活習慣の見直し:まずは生活習慣の改善(体重管理、アルコール制限など)を試みる
- 非侵襲的治療の検討:マウスピースやCPAP療法などの非侵襲的治療を検討する
- レーザー治療の適応:適応がある場合にレーザー治療を検討する
特に、いびきが睡眠時無呼吸症候群の症状である場合は、レーザー治療だけでは不十分なことがあります。睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、CPAP療法や口腔内装置(マウスピース)などの治療法も検討する必要があります。
専門医の役割と重要性
いびき治療において、専門医の役割は非常に重要です。専門医は以下のような役割を果たします。
まず、いびきの原因を正確に診断し、単純ないびきなのか、睡眠時無呼吸症候群なのかを見極めます。そして、患者さんの状態に合った最適な治療法を提案します。
また、治療の効果を定期的に評価し、必要に応じて治療法を調整します。さらに、治療に伴うリスクや副作用について適切に説明し、患者さんが十分な情報を得た上で治療を選択できるようサポートします。
私たちコレージュクリニックでは、これまで29,000件以上のいびき治療の実績があります。患者さん一人ひとりの状態を詳細に診断し、最適な治療法を提案しています。

いびき治療に関するよくある質問
いびき治療について、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q1: レーザー治療は痛みがありますか?
レーザー治療は基本的に痛みが少ない治療法です。照射中にピリピリした痛みを感じる方もいますが、痛みに敏感な方はスプレーで一時的な粘膜への麻酔をすることも可能です。術後ののどの痛みもほとんどなく、術後当日から食事や運動の制限もありません。
Q2: レーザー治療の効果はどのくらい続きますか?
効果の持続期間には個人差がありますが、3〜5回の照射で約1〜3年効果が続くと報告があります。その後はいびきの程度によって1年に1〜2回程度の照射を行い、効果を維持することが一般的です。
Q3: レーザー治療は保険適用されますか?
いびきに対するレーザー治療は、健康保険の適用外となります。ただし、いびきに加えて睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、CPAP療法や口蓋垂口蓋形成術などの治療法が健康保険の適用となる場合があります。
Q4: レーザー治療の成功率はどのくらいですか?
本治療を受けた方の統計では、初回治療で約50%の方が改善しています。2回目治療後では80%の方が改善したと実感されています。ただし、効果には個人差があり、いびきの原因や重症度によっても異なります。
Q5: レーザー治療以外のいびき対策はありますか?
はい、あります。体重管理、睡眠姿勢の工夫(横向き寝など)、アルコール摂取の制限、禁煙、規則正しい睡眠習慣の確立などが効果的です。また、マウスピース療法やCPAP療法も選択肢となります。いびきの原因や重症度に応じて、最適な対策を選ぶことが重要です。
まとめ:いびき治療の安全な選択のために
いびき治療、特にレーザー治療は、多くの方にとって魅力的な選択肢です。切開や麻酔を必要としない非侵襲的な治療法であり、痛みや出血が少なく、回復期間も短いという利点があります。
しかし、その効果や安全性については、いくつかの注意点があります。特に、いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群である場合や、肥満がある場合などは、レーザー治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。
いびき治療を検討する際には、まず専門医による適切な診断を受け、自分のいびきの原因や重症度を正確に把握することが重要です。そして、その診断結果に基づいて、最適な治療法を選択することが、安全かつ効果的ないびき治療への第一歩となります。
私たちコレージュクリニックでは、患者さん一人ひとりの状態を詳細に診断し、最適な治療法を提案しています。詳しい情報や予約については、コレージュクリニックのウェブサイトをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。
コレージュクリニックとは

当院は、いびきをはじめ、睡眠時無呼吸症候群や花粉症・アレルギー性鼻炎などの診療を専門とする耳鼻咽喉科クリニックです。
いびきは単なる音の問題にとどまらず、時に健康へ深刻な影響を及ぼすこともあります。当院では、原因や症状を丁寧に見極めたうえで、適切な診断と治療をご提案し、質の高い睡眠の回復をめざします。
一人ひとりに寄り添いながら、健やかな眠りと快適な毎日をサポートいたします。
レーザー治療は保険適用、自己負担は約3割
ほとんどの治療は健康保険が適用され、自己負担額はおよそ31,000円前後。保険証をお忘れなくご持参ください。
医師紹介
都筑 俊寛(つづく としひろ)

耳鼻咽喉科専門医。レーザー治療の臨床と研究に長年携わり、28,000件以上の治療実績をもつ。
- 日本耳鼻咽喉科学会認定 専門医
- 日本めまい平衡医学会 参与
- 日本臨床医療レーザー協会 会員
- 帝京大学医学部 元准教授
いびきは単なる音の問題ではありません。 睡眠の質を下げ、生活の質を大きく損なうこともあります。 専門医として、安心できる診断と治療を通じて、より良い毎日を取り戻すお手伝いができればと願っています。